デンマーク自治領グリーンランドで伝統産業と観光推進の軋轢

北欧デンマーク通信

デンマークの教育や生活、働き方、制度やデンマーク人の考え方について

こんにちは!デンマーク公認ライセンスガイド・通訳・コーディネーターのウィンザー庸子です。

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デンマークの人口は約580万人で、これは兵庫県の人口規模とほぼ同じとなっています。ちなみに、コペンハーゲン市の人口は市内が約65万人、市外の住宅地なども入れたコペンハーゲン圏では約130万人で、これは神戸市の人口規模に匹敵します。国土の大きさは九州くらいです。

我が家には、デンマーク人の主人、デンマーク人でもあり日本人でもある、中学校1年生と、4年生の男子2人と、1歳のちょうどお誕生日の日から保育園に入った3歳の女子1人と、日本人の私がいます。

そこで私たちがデンマークで生活する中で感じる、デンマークの教育や、仕事や、生活や制度、デンマーク人の考え方について、お話したいと思います。

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デンマーク自治領グリーンランドで伝統産業と観光推進の軋轢

デンマーク自治領グリーンランドの首都ヌーク近郊のヌープ・カンゲルア湾では、長年ザトウクジラ猟が行われてきました。

しかし、ヌープ・カンゲルア湾を管理するセアメアスーク市議会の多数派は最近、ザトウクジラ猟を禁止することに賛成し、ザトウクジラで生計を立てる2つの産業の明暗を分けることとなりました。

その一つは、クジラ猟です。長年猟師たちはクジラを撃ち、その肉を売って生活してきました。

もう一つは観光業です。クジラウォッチングは、観光客の自然体験プログラムの中で、最も需要の高い、魅力的な「アトラクション」の一つです。

観光業側は、銃では鯨を一度しか撃てないが、カメラのレンズで鯨を捉えることは何度でもできることを強調しています。

この問題は、2021年4月6日に行われたグリーンランド自治領選挙に向けて議論された議題の一つでした。

グリーンランド最大の産業は漁業です。しかし同時にグリーンランドは、デンマーク本国より年間約40億クローネ(約700億円)の補助金も受け取っており、これはグリーンランド自治領の収入の約半分に当たります。

もしグリーンランドが夢見るデンマークからの独立を果たすならば、まずはグリーンランド経済が発展する方法を見つける必要があります。ザトウクジラの保護は、グリーンランド経済発展のカギとなる観光業の推進の一つの施策となります。

アナス・リュッケ・ラウアセン氏は、ヌーク湾を航海してクジラ・ウォッチングを提供する、ヌーク・ウォーター・タクシーを経営しています。船には、暖房設備と椅子を備えたキャビンとトイレがあります。

アナス氏によると、船はザトウクジラの群れから約200メートルの所でエンジンを止めます。するとザトウクジラが時間をかけてゆっくりと近づいて来ます。船の方から近寄るのではありません。

「ザトウクジラはまるで観光用のクジラと言えます。観光客のアイドルです。ザトウクジラが楽しんでいる様子が良く見えます。観光客の歓声に反応します。尻尾を見せたり、曲芸をしたり、泳ぎ回ったりします。他の種類のクジラは、ちょっと背中を見せてから行ってしまうだけです。」

顧客にザトウクジラが必ず見られることを保証する為に、湾内にザトウクジラが沢山いることが、アナス氏のビジネスにとっては非常に重要となります。

アナス氏は、猟師達が猟をする為に他の場所まで航海しなければならなくなることを憂いていることを知っています。しかしアナス氏は、より大きな視点で、ザトウクジラを保護するという方針を捉える必要があると述べます。

「グリーンランドにより多くの観光客を呼びたいと思ったら、観光客に見せられるものがなくてはならないのです。」

クジラ猟は長年グリーンランドの文化の一部であり、観光業の方がグリーンランドの伝統よりも重要なのかという問いに対しては、アナス氏は、以下のように答えます。

「そんなことはありません。しかし皆が活動できるような余地があるべきです。私はクジラ猟師と不仲ではありませんし、クジラ猟師に反対する気持ちはありません。その逆です。社会経済の観点からは、クジラを撃つよりも保護する方がより高い利益が得られるというだけです。」

アナス氏の収入の約20%は、クジラ・ウォッチングから来ています。この割合を、アナス氏は50%まで高めたいと願っています。

アナス氏は、2019年には2か月間毎日観光客を案内していました。2020年はコロナのせいで、異常に静かな年となってしまいました。

アナス氏は、元漁師を何人も雇用しており、彼らが「(屋根のない船から)クジラを撃つよりも、あたたかい船の中でお金を稼げる方が楽しい」と言っていると強調します。

アナス氏は、一頭が撃たれると、6-8頭のクジラの群れが永久に湾に寄り付かなくなってしまうと述べます。

「戻ろうとはしないのです。」

ザトウクジラの保護は、ヌープ・カンゲルア湾、及びヌークからカンゲック、キトシスット、アンギスングアック島、アクィセアシオアフィクの間の海域に適用されます。

域外では、今もザトウクジラ猟をすることが可能です。

ヌーク港の船首では、アントン・エーデ氏が、ザトウクジラを見つめていました。アントン氏は長年漁師兼クジラ猟師をしています。従って、2021年4月6日の選挙後に編成されるグリーンランド議会の31名の議員が、ザトウクジラ保護案を承認すれば、直接影響を受ける一人です。

アントン氏は保護案が却下されることを願っています。

「私達は海で捕れる物で生計を立ててきました。グリーンランドは農耕には適さないので、漁業がうまく行かない時には、クジラ狩りで10万クローネ(約175万円)も稼げるんです。」

付けられる価格は大きさによって異なります。アントン氏は、今までに約100頭のクジラを仕留めてきました。その内約10頭はザトウクジラだったと言います。

「クジラ猟からの収入なしで生きていくことはできません。私達の懸念は、保護法が、ヌークから、観光客が来る他の都市にも広がっていくことにあります。私の考えでは、これは私達の文化と生業に対する脅威です。」

観光業を振興するのは良いことではないかという問いに対しては、アントン氏は、

「何か別のことを考えるべきだと思います。クジラを保護するならば、クジラを追い回してストレスを与える観光船からの保護すべきです。観光船の方が私達の猟よりも悪い影響を与えています。」と述べます。

グリーンランド政府与党シウムットのエリック・イェンセン党首は、ヌーク湾で鯨を保護するという市の決定に反対を唱えています。

エリック党首は、この決定を懸念していると述べます。

「グリーンランドが最も収入を得ているのは、現時点ではまだ観光業ではなく、漁業です。漁業は私達にとって最大かつ最も重要な産業です。私達の海洋資源を保護するよりも、活用したいと思っています。」

野党イヌイット・アタウァチギートのミューテ・B・エーデ氏は、漁業は、今後も長年に渡りグリーンランドに最も大きな収入をもたらす産業となると考えています。

ミューテ党首は、ザトウクジラの保護に関して賛成または反対の意見を表明しませんでしたが、一般的には、観光業を推進するならば、自然を守る為には平和と落ち着きが求められることを思い出す必要があると述べます。

ミューテ氏は、大量に観光客が押し寄せるよりも、裕福な層の観光客が少数訪れることを望んでいます。

「観光にほとんど駆逐されたアイスランドとは別の道を行かねばなりません。私達の自然は非常に影響を受けやすいので、環境に配慮した、持続可能な観光でなくてはならないのです。」

ザトウクジラの保護に関する提案は4週間専門家により検討され、27名のうち26名の専門家が賛成しました。

グリーンランド自治政府観光局のマッズ・ダニエル・スキフテ副局長も、この提案を歓迎しています。観光産業の推進は、既存の経済を十分に補完し、グリーンランドの収入を増やす方策の一つとなるという考えからです。

グリーンランド観光局のマーケティング部門は、グリーンランドで観光客が体験できるまたはすべき5つのことを、「The big arctic five (北極圏のビッグ5)」というコンセプトを宣伝しています。

その5つとは、氷、オーロラ、人、犬ぞり、そしてクジラです。

上述のマッズ副局長は、「グリーンランドはアドベンチャーの拠点として知られてきました。観光客はグリーンランドに来て、日常慣れ親しんでいる場所の外にある体験を楽しみます。その体験の中で重要なのが、クジラを見ることです。グリーンランドの住人にとってクジラが重要であるのと同様に、観光客にとっても重要なので、クジラを保護するという考えを支援しています。」と述べます。

グリーンランド統計局によると、グリーンランドを訪れるクルーズ船からの観光客数は、2014年20214人から、2019年には46633人となり、5年間で倍以上になっています。

自然環境の保全、伝統文化の継承、経済発展、ひいては経済的に自立し、自治領が国として独立を遂げることの間で、グリーンランドは難しい決断を迫られています。

更には、グリーンランドの固い氷の下には、グリーンランドやデンマークの技術力と資金力では掘り出せない豊富な天然資源が隠れているらしいということと、軍事上極地を制覇することが重要ということで、グリーンランドは頻繁にアメリカや中国からの買取や資金提供のアプローチを受けています。

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北欧の福祉や環境政策、さらには心地良いを意味するヒュッゲで知られるデンマーク。

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2003年からデンマークに在住の公認ライセンスガイド・通訳・コーディネーター&主婦で3人の母親の、

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