デンマークで移民の子弟を学区以外の学校に送る政策

北欧デンマーク通信

デンマークの教育や生活、働き方、制度やデンマーク人の考え方について

こんにちは!デンマーク公認ライセンスガイド・通訳・コーディネーターのウィンザー庸子です。

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デンマークの人口は約580万人で、これは兵庫県の人口規模とほぼ同じとなっています。ちなみに、コペンハーゲン市の人口は市内が約65万人、市外の住宅地なども入れたコペンハーゲン圏では約130万人で、これは神戸市の人口規模に匹敵します。国土の大きさは九州くらいです。

我が家には、デンマーク人の主人、デンマーク人でもあり日本人でもある、中学校1年生と、4年生の男子2人と、1歳のちょうどお誕生日の日から保育園に入った3歳の女子1人と、日本人の私がいます。

そこで私たちがデンマークで生活する中で感じる、デンマークの教育や、仕事や、生活や制度、デンマーク人の考え方について、お話したいと思います。

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デンマークで移民の子弟を学区以外の学校に送る政策

デンマーク第2の都市オーフスでは、今年8月に入学を迎える生徒の内、48名の二言語を話す移民の子供が、近所にある学校でなく、別の学区にある学校に入学します。

移民の家庭では家庭でデンマーク語が日常的に話されておらず、入学時に生徒のデンマーク語能力が低いことが多く、そうした2言語児が一つの学校に多く集まってしまうと、デンマーク語の習得が遅れ、ひいては教科の習得にも影響を及ぼし、学業の遂行が難しくなってしまうことが、デンマークでは問題となっています。この問題への対応として、デンマーク語能力が低い移民の子弟を、2言語児の生徒が少ない別の学区の学校に送る政策が、デンマークで実施されています。

オーフス市では今年2021年、過去5年間で最も多い48名の新入生を、居住している地域以外の学区の学校に入学させます。

2020年8月に入学した0年生(デンマークでは保育園の後1年保育士さんが学校の教室で、1年生から本格的に学業を始める準備をする0年生という学年があり、0年生から義務教育となっています。)のファティマちゃんは、近所にあるティルスト学校ではなく、オーフス西部のサブローコースヴァイエン学校に通っています。

ファティマちゃんの母親であるレハブ・アバス氏は、

「市から、ファティマの言語能力に対応できる学校に行く必要があると言われました。デンマーク語の習得の為にサポートが必要で、近所の学校では、既に生徒の20%に言語的な問題があるので、近所にあるティルスト学校では対応できなかったそうです。」

と述べます。

レハブ氏は、ファティマちゃんが近所の学校に通うものとばかり思っていたので、驚きと悲しみを覚えたと言います。

「送り迎えの事や交通のことも懸念しましたし、ファティマはサブロ学校の人を誰も知りません。」

交通に関して、少し難しい側面がありました。バスに乗るまでに、幾らか歩かねばならないからです。朝登校するのに時間がかかりますが、その他の点ではファティマちゃんはサブロ学校に行っていることに満足しています。

「ファティマは学校を楽しんでいます。でも、よくなぜそんな遠い学校に行っているのと聞きます。」とレハブ氏は付け加えます。

オーフス市では、教育に熱心な自身も高学歴の親が、子供を転校させて、公立学校に大きな違いが生じる事態を防止する為に、2006年から、移民の子弟をバスで別の学区にある学校に入学させる政策を取っています。過去には、あまりにも悪い状態になってしまった学校が、閉鎖に追い込まれるという事態もありました。

しかし、昨年2020年トリュック基金が実施した児童研究調査の結果から、バスで別の学区の学校に送られる生徒は、同年齢の他の生徒に比べて、社会的にも教科の習得の面でも、劣っているという結果が示されてしまいました。

この調査結果にもかかわらず、社会人民党のトーマス・メドム児童青少年分野代表議員は、このバスで移民の子弟を別の学区に送る政策を支持しています。

「なぜなら、バスで移民の子弟を別の学区に送る政策の代替案の結果は、もっと良くないものとなるからです。学校閉鎖や、学校に馴染まず成績も悪い生徒を生み出します。オーフスでは、何年もこのバスで移民の子弟を別の学区に送る政策を実施しています。移民の子弟が多く通う一部の学校を、移民以外の子弟の保護者が選ばなくなるのを防ぐ為です。」

トーマス議員は、過去にノアゴー学校とトウスホイ学校が、ほぼ移民の子弟のみが通う学校となってしまった為に、閉鎖されたことを例として挙げました。

しかしが未だに、トリュック基金が実施した児童研究調査の研究員の一人だったオーフス大学のアンナ・ピール・ダム教授は、市が未だにこのバス通学政策に対する、明確な目標を提示できていないと指摘します。

「デンマーク語のサポートが必要な生徒も、近所の学校に行っている子供と同等に充実した学校生活が送れることが目標となりますが、この目標は達成されていません。」

アンナ教授は、数学とデンマーク語の両方の教科において、バスで別の学区の学校に入学した生徒の方が、デンマーク語のサポートが必要でも地域の学校に通った生徒に比べて、成績が悪いと強調します。

そしてこの傾向は、高学年になっても続いています。「全国テストのデンマーク語の試験成績を見ると、8年生までずっと、バスで別の学区の学校に行っている生徒の方が、成績が悪いのです。」

同級生との社会的な穀粒に関しても、良くないことが分かっています。

「生徒の社交性に関する研究があり、既に入学当初から、二言語児の生徒は、別の二言語児の同性と遊んでいることが多くあります。デンマーク語のみ話す生徒と同時に、別々に遊んでいるわけです。移民の融合は、ほっておいても自然に生まれるものではないようです。」

しかし上述のファティマちゃんは、新しい学校で友達ができたと母親のレハブさんは述べます。

「サブロ学校でよい友達ができました。でも、ファティマは、ティルスト学校に行きたかったと話しています。従姉妹もティルスト学校に行っていますし、ファティマのサブロ学校の友達の内幾人かは放課後の課外活動の習い事でティルスト学校に行っているので。」

バスで二言語児を、二文化児の少ない別の学区の学校に入学させるという政策の目的は、より早くデンマーク語を習得させることにあります。コロナ禍で学校がロックダウンとなった時も、ファティマちゃんのデンマーク語には上達が見られたとレハブ氏は述べます。

「少し上達しました。大きな違いが生まれたというわけではなかったですが。」

上述の社会人民党トーマス議員は、研究所の調査結果が発表されてから、いろんな改革が行われたと述べます。

「研究結果を基に、バス政策を改良する為に、あらゆる手を尽くしました。」

オーフス氏は、バス政策や、二文化児のデンマーク語習得の為の特別な対応に関する、

大きな分析を開始しようとしています。今年2021年秋には市議会で検討される予定です。

「より良い方策を見つけたいと思います。しかし同時に私には、オーフス西部のいくつかの学校に、移民の融合の責任を全て擦り付けるということは、解決策にはならないと思います。その代わりに、オーフス市の二言語児の通う学校を広げて、各学校の二文化児の人数を少なくし、より多くのデンマーク語の授業を受けることが出来るようにすべきだと思います。」と上述のアンナ教授は述べます。

学校でうまく行かない、不安、お腹が痛いなどの症状は、長期に渡って続く可能性があります。

「短期的には、安心できる、良い学校生活のスタートを切ることが解決法の一つとなると思います。『私達』という感情を強化する特別なイニシアティブが必要です。例えば、休み時間にクラスみんなで遊ぶとか。」

同時に、アンナ教授は、デンマーク語のサポートの為の予算が、きちんと目的通りに使われているか疑問が残るとしています。なぜなら、その予算を使って、終日授業日をもっと増やすことが出来るはずだからです。

「授業時間を長くして、デンマーク語と英語を、二文化児の教育を専門とする教師が教えることが必要です。」

上述のトーマス議員は、オーフス市はバス政策を改善する為に、できる限り全てのことをしていると述べます。

「各学校は、入学当初から、様々な生徒が一緒に遊べる関係を築くことを重視してきました。そして、バス政策の為の予算が、それを必要としている生徒の支援に使われているか、学校全体の予算に単に吸収されていないかのチェックもしています。」

トーマス議員は、保護者にも、子供が学業において力を伸ばすことを支援する責任があることを強調します。

「保護者も大きな責任があるということを認識する必要があります。保護者が自分の子供がデンマーク語を学ぶように努力していれば、地元の学校を選べる自由な学校選択の権利があるのです。入学後も、デンマーク語を習得した後には、別の学校を選択する事が出来ます。」

レハブ氏は現在も、ファティマちゃんがデンマーク語を上手に使えるようになれば、ティルソト学校に転校させるという希望を持っています。しかし同時に、それには問題も伴うということを自覚しています。

「その頃には、今通っている学校の友達や先生やクラスに馴染んでいることでしょう。何度も学校を変えさせるわけにはいかないですから。。。」

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