デンマークは住みやすいか?に関して、思うことを書いてみました
デンマークでガイドをしております、ウィンザー庸子です。
よく、ご案内中に、お客様から、ここは住みやすい?と聞かれます。
こちらの生活はいかが?というご質問ではなく、住みやすいんでしょう?
という質問が多いです。こちらに住んでいていいわねえ、とおっしゃられる方もいます。
デンマークにとっては、遠い日本の方が、デンマークの印象を良く持って下さっているということなので、とてもありがたいことだと思うのですが、いつも、私は、
「こちらでのご滞在を楽しんでいただく為のガイドがこんなことを申し上げるのはいけないのだと承知しておりますが、正直に申し上げてよろしければ、私は今すぐにでも生まれ育ったつつじヶ丘という場所(東京の西部のごく普通の住宅地)に戻りたいんですよ。」と笑ってお答えしています。
正直な気持ちです。今日本を離れて12年になります。
子供が伸び伸び育てて、デンマークには心から感謝していますが、私はやはり生まれ育った場所が、人はいちばん恋しい場所なのではないかという思いを、いつしか強く持つようになりました。しかも、日本は人も製品やサービスも、何もかもが細やかで、いい意味で大変特異な地だと思うので、日本のようないい所は他にないなと、ため息がひそかに出ます。
でも、もちろん、東京の通勤電車の中で毎日過ごす過酷な時間や、残業が必須となる業務量やスピードの速い市場などのことを思うと、日本に住んでいるからといって、楽しいことばかりではなく、生活して、特に仕事をするうえでは、非常に厳しい環境の社会であることも存じています。
私は今は休暇で楽しみに短期間帰る場所が東京なので、ノスタルジーを感じてしまうだけだろうとも認識しています。
そんな私の個人的な感情は置いておいて、お客様の質問の本質に関して、思うことを述べさせて下さい。
たいていの方のご質問は、「北欧のデンマークは福祉国家で安心して住めて、住みやすい所と聞いているけれど、日本から移り住むことになって、日本の生活も知っている私にとって、こちらの方が住みやすいという実感があるかしら?」というご意図だと思います。
デンマークを住みやすい場所と思うかに関しては、住みやすい側面もあり、そうでもない側面もあると思っています。
確かに、デンマークでは、高福祉政策を採っているので、いざ困った時には、国が助けてくれるはずという安心感があり、国民全体の精神の安定に非常に大きく寄与していると思います。
デンマーク国家は借金もなく汚職も世界で最も少ない国の一つだそうで、大変健全な財政状況という報告がありますので、きっと杞憂なのでしょうが、私は日本人なので、そんなに国が個人の生活を最終的には面倒みてくれるだろうとみんなが当てにしていて大丈夫なのかな、とちょっと心配になります。
でも、高福祉を支える為の財政基盤となる税金が高いので、じゃあ、私だけは将来の為に備えておこうと思ったとしても、それを実行するのはかなり難しいです。高税制で国民が収入の約半分またはそれ以上、買い物時には25%の消費税を納めている為です。
月の終わりには、ほとんどの人が、ほとんど貯金ができないのです。ちなみに相続税も高く、所得の再分配が進んでいるので、格差が少なく、親世代の富が次世代に受け継がれる割合も、日本よりも少ないです。
高福祉というのも、確かにお金がない人も路頭に迷うことなく、介護や医療が必要と認定されれば必要な支援が無料またはその人の収入や資産に見合った安価で提供されるのは素晴らしいと思いますが、それ以上のサービスを求める人は、お金があったとしても、選べる選択肢があまりありません。
お金がある人もない人も、デンマークの担当省庁や市町村が妥当と考える内容の医療サービスや介護サービスを、同様に受けています。人口は560万人と兵庫県が独立した位の規模なので、マーケットも小さいせいか、民間の福祉サービスもあまりありません。
医療は、健康保険があっても30%自己負担があるとはいえ、至れり尽くせりでケアして下さる日本よりも、無料が故に、税金が財源の医療費の不要な支出を避けるべく、病気そのものの治療の本質に専念し、それ以外の緩和的なケアは省くという姿勢なので、体力と気力が落ちている時にはちょっと辛いと感じることもあります。
ちなみに、次男を出産した時には、無料ではありましたが、4時間で退院となる所を、おまけして6時間にしてもらって、退院しました。上の子がウンチをすればよろよろと拭きに起きて、主人は休暇が取れるとはいえ、結局なんだかんだで寝てもいられませんでした。
翌日には、きちんと意見を言わなかった自分が悪いのですが、主人がみんなで近所の公園に散歩に行こう、上の子が退屈するから、と言われ、私は産んだばかりで自分も赤ちゃんも心配だから行きたくないと思いましたが、普通の生活を始めた方が回復も早いのではないかと言う主人に反対するのも、その時体力が落ちていた為か面倒だったので、フラフラとついて行き、数日後ふと気付くと、足の間に嫌な違和感があり、子宮が下がってしまっているとネットで分かって、大変なことになったと思いました。
その後、お医者様から筋力が戻ってじきに戻るとはいわれましたが、一生こんな違和感が股間にあるままだったら、と大変心配になりました。産後はあまり動かず、大事にしなきゃと昔から日本ではいわれていると思いますが、本当にそうだと思います。
そして、外国にいる時には、または国際結婚の場合には、家庭内も外国なので、大事な時には自分の意見をはっきり言えないと自分に最終的に返ってくるということも改めて感じました。でも、ちょっと体力が落ちている時には、それは難しいこともあります。
また、高齢者入居施設に関しても、銀行の頭取だった人も、あまり貯金がなく高齢者となった人も、結局は同じ施設で隣同志となり、同じご飯を食べているというのを、みんなが当然のこととして受け入れていることには、デンマーク人は考え方が大人だなと思っています。
さらに、女性が経済的精神的な自立を求めて60年代に勝ち取ってきた権利ではありますが、男女平等の社会ということは、つまり、家計だって女性が半分支えて行かねばゆとりのある生活はできず、つまり女性も家計を担う重要な働き手、稼ぎ手なので、結婚したり出産したから家庭に入るという選択肢は女性には残されていません。ほとんどの人は、自己実現をしたいとかそんなことを考えているのではなく、ほとんどの家庭で、望む生活が一人だけの収入では成り立たないからです。
本当に、女性は人生の転機に仕事を変えることはあっても、辞めてしまおうという風にはもはや思いつかないのです。社会としても、就労年齢に達している市民は、性別にかかわらず大事な税収の担い手と考えているので、家に入ってもらっては、困るということになります。
従って、保育や介護で離職するのは社会にとっても不利益となるので、保育施設や高齢者福祉施設の数は大変充実しています。そういった施設は、多くの女性に雇用機会も提供しています。
ただ、シングルマザーの世帯など、家計の担い手が一人で収入も限られる家庭には、保育園の半額、全額免除や、住居補助や生活保護があり、一人で金銭的に子供を育てられないという家庭はほとんど聞かないのは素晴らしいと思います。また、女性が元々仕事を持っているので、離婚などに際しても総じて経済的に自立しているのは、女性が勝ち取ってきた権利故だと思います。
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