デンマークの移民の子供達と元移民融合大臣の軋轢
北欧デンマーク通信
デンマークの教育や生活、働き方、制度やデンマーク人の考え方について
こんにちは!デンマーク公認ライセンスガイド・通訳・コーディネーターのウィンザー庸子です。
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デンマークの人口は約580万人で、これは兵庫県の人口規模とほぼ同じとなっています。ちなみに、コペンハーゲン市の人口は市内が約65万人、市外の住宅地なども入れたコペンハーゲン圏では約130万人で、これは神戸市の人口規模に匹敵します。国土の大きさは九州くらいです。
我が家には、デンマーク人の主人、デンマーク人でもあり日本人でもある、中学校1年生と、4年生の男子2人と、1歳のちょうどお誕生日の日から保育園に入った3歳の女子1人と、日本人の私がいます。
そこで私たちがデンマークで生活する中で感じる、デンマークの教育や、仕事や、生活や制度、デンマーク人の考え方について、お話したいと思います。
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デンマークの移民の子供達と元移民融合大臣の軋轢
デンマークでは今、2016年当時移民融合大臣だったインガ・ストイベアが、もしかしたら違法に、妻が18歳以下の難民夫婦の事情を個々に検証せずに(事情を個々に検証していれば合法だった)一斉に難民センターで離れた場所に収容するよう傘下の移民庁に指示したのではないかという疑いが問題になっています。
ストイベアは、前日の政策決定では「事情を個々に検証して」という一文が入っていたものの、記者会見では詳細を説明する場ではないので「事情を個々に検証せずに」発表し、その記者会見の方を移民庁が自分の知らない間に忖度して実行してしまったという説明をしていますが、議会の多数派は、傘下の移民庁の行動を大臣が把握していなかったわけがないということで、調査委員会が設けられ、違憲会議にかけられることになりました。
このように、法治国家としてデンマークが機能しているかの問題が取りざたされるのと並行して、イスラム教の文化とデンマークの文化に隔たりがあることから長年デンマークが苦心している、移民難民のデンマーク社会への融合を国民が再度考える機会となっています。
ストイベアだけでなくデンマークの政治家の多数派は、まだ学業も終了しない若い内に女性が家族が決めた婚約者のもとにお嫁に行くイスラム教の慣習は、自由恋愛と個々の経済的、精神的な自立を目指すデンマークの慣習にそぐわず、若い女性の人権が守られるとは言い難いので、反対するという姿勢を持っています。
また、一部の移民やその子孫は、専門職に就く為の職業教育を受けられずに低賃金の職に就くか生活保護に頼ったり、ギャンググループを形成したり自転車泥棒や喧嘩をするなど小さな犯罪を繰り返したりして、デンマークの治安と福祉を悪化させていると考える人もいます。
しかし、専門職に就く為の職業教育の一環となっている職場での実地研修の職に就くのに、履歴書の名前がピーターやトーマスでなく、アリやモハメドの場合には、書類で既にはねられるケースが多いなどの差別の為に、研修先が見つからずに職業教育課程が続けられなくなり諦めて辞めてしまうといった、デンマークで社会に貢献したいと思う移民及びその子孫に対する、受け入れ側としてのデンマークの問題も指摘されています。
このような状況の中、2015年当時ラース・ルッケ政権のもとに、移民融合大臣となったストイベアが大臣に任命される前に経験した映画館でのエピソードをフェイスブックに投稿して、12000人からコメントが付き、2千人がシェアしたということがありました。人口580万人のデンマークでは、かなり大きな注目が集まったことが分かります。
そのエピソードとは、後ろに座った14-15歳位の移民の少年たちのグループが、映画館で始まりから終わりまでずっと、席を蹴ったり、ポップコーンを投げたり、声を出して話をしたり、周囲に迷惑をかけたというものでした。「この子たちの保護者は何をしているのでしょうか、いつになったらこの子たちは落ち着くのでしょうか。あなたたちはデンマークに住んでいる以上、行儀よくする必要があるのに。こんなことを続けていては、将来何にもなれなくなります。あなたたちに私たちの社会の一部になれるよう、チャンスを上げたいと思っています。しかし、今のような態度を続けるなら、将来困ることになるでしょう。このようにしてほしいということを他の人にもして下さい。簡単なことだと思いますが。」
少年たちは、初め自分たちが迷惑をかけた人が移民融合大臣になって、フェイスブックの投稿が注目を集めていると知って、自分たちのことだと学校で友達に話しましたが、先生から、将来就職などで不利益を被るかもしれないから、もう周りに言わない方がいいと忠告を受け、みな黙ることにしました。6年経った今、大人になったその少年たちの2人が実名と顔を出して、ユーチューブでストイベアに謝罪をして、同時にお願いをしています。
友達と一緒で嬉しくてはしゃぎすぎてしまい、周りに迷惑をかけた映画館での態度を謝罪すると共に、自分たちを移民の少年(invandredrerdrenge)とひとくくりにして呼ばないでほしいという嘆願でした。ディアは今高等教育を受ける前に幼稚園で保育補助の職に就いており、両親はイラクの出身です。ブレリムはロスキレ大学の学生で、時折小学校の補助教員をしており、両親はマケドニアとアルバニの出身です。2人とも20歳です。
2人は、デンマークで生まれ育ち、自分たちが移民のグループで固まっているとは考えていません。デンマーク出身のいわゆるデンマーク人の友達といる時には、自分たちも含めて皆デンマーク人の少年です。自分のことを知らない人だけが、自分のことを移民と呼ぶのです。このことを自分たちはグロテスクだと思い、止めるべきだと思っています。自分たちは、ストイベアが呼ぶように、「このようなことを続けると、何にもなれない」とわけではなく、皆高校を卒業して、高等教育を受けているか、その前のギャップイヤーを取得して働いており、デンマーク社会を担う一員となっていることを示したくて、表に出ることにしました。ストイベアが呼んだ移民の少年は、実際には、きちんとした、常識のある子であり、一様に纏めて切り捨てるべきでないことを示したいと思うと言います。
ストイベアはディアとブレリムの謝罪を歓迎しながらも、移民の少年と纏めてレッテルを張るつもりではなかったと言います。「もし彼らがヘドソンサッカーチームというシャツを着ていたら、そのチームの名前を書いたでしょう。それだけのことで、そこが大きな問題になることが理解できません。もし彼らの写真を撮って投稿に載せりしたら批判を受けるのは当然だと思いますが、そんなことをしたわけではないのに。」と述べます。
ストイベアの投稿は、様々な批判を受けました。もし迷惑をかけたのが、デンマークにルーツのあるデンマーク人の少年たちだったら、同じ投稿はしなかっただろうというものです。
ディアとブレリムにとって、移民の少年と呼ばれたことがどうしてそんなに大きな意味を持つのかという問いに対して、2人は、移民(invandrere)という言葉は、私たちと彼らという二項対立を生むからと言います。同じ場所に住んで、同じことをしているのに、私たちと彼らに分けてしまうこの言葉の使い方を変える必要があると考えています。
移民の少年という言葉を使った政治家は、ストイベアだけではありません。現首相のメッテ・フレデリクセンも使ったことがあります。
「行儀の悪い15-17人の移民の少年が乗っているから、コペンハーゲンの在来線エストレインに夜乗るのが怖いというような状況は生み出してはならないと思います。」
ブレリムの考えでは、首相までがこうした発言をしてしまうと、移民の融合は難しくなります。皆同じように扱われるべきなのに、実際には扱われていないからです。
ブレリムが4、5年生の補助教員として学校に行くと、小さい子供達も、このロジックを感じていることが分かります。休み時間には、国外にルーツを持つ子たち対デンマークにルーツを持つ子たちがチームに分かれて対戦しているのです。こんな小さいうちから、俺たちとあいつらが始まっていることは問題です。
ディアは、これは自分自身がたどってきた道だと言います。行儀よくできない移民の少年と言われ続けると、いつか本当に自分が言われた通りになってしまっていることに気づくと。
2人はノアブロの社会的弱者の人が多い地区で育ちましたが、環境に関わらず、皆他の人と同じ可能性を持っていると考えています。しかし、この私たちと彼らのロジックは、14-15歳の若い少年があと数年したらジャーナリストになろうと思ったりすることを妨げると言います。
批判も受けることを覚悟で、ディアとブレリムは表に出ることにしました。この「私たちと彼ら」の概念を変える為に。
アメリカのブラック・ライブズ・マター運動が示したように、デンマークでも、異質な文化や考えや外見の中に理解と共感が及ぶ同質性を見出したり、異質なものを異質と認めた上で共存したり、異質な何かから学ぶことによって自らが属する同質な共同体を更に進化させるのは、簡単なことではないと、異質であることを思わず忘れそうになる私は、改めて考えさせられます。
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北欧デンマーク通信
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2003年からデンマークに在住の公認ライセンスガイド・通訳・コーディネーター&主婦で3人の母親の、
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