デンマークで語られる、大気汚染が世界中で年間870万人の命を奪っているという話

北欧デンマーク通信

デンマークの教育や生活、働き方、制度やデンマーク人の考え方について

こんにちは!デンマーク公認ライセンスガイド・通訳・コーディネーターのウィンザー庸子です。

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デンマークの人口は約580万人で、これは兵庫県の人口規模とほぼ同じとなっています。ちなみに、コペンハーゲン市の人口は市内が約65万人、市外の住宅地なども入れたコペンハーゲン圏では約130万人で、これは神戸市の人口規模に匹敵します。国土の大きさは九州くらいです。

我が家には、デンマーク人の主人、デンマーク人でもあり日本人でもある、中学校1年生と、4年生の男子2人と、1歳のちょうどお誕生日の日から保育園に入った3歳の女子1人と、日本人の私がいます。

そこで私たちがデンマークで生活する中で感じる、デンマークの教育や、仕事や、生活や制度、デンマーク人の考え方について、お話したいと思います。

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デンマークで語られる、大気汚染が世界中で年間870万人の命を奪っているという話

ハーバード大学で行われた新しい研究で、大気汚染に起因する疾患で死亡する人の数が、世界中で年間870万人であることが分かりました。これは、世界保健機関WHOが評価していた死亡数の倍に当たります。

デンマークに住んでいても、息を吸って肺に送る空気は全く清潔ではありません。発電所や自動車や暖炉で石油、ガス、石炭といった化石燃料を燃やす際に発生する微細な粒子、PM2.5が空気には混じっているからです。こうした粒子が体内に入ると、肺、脳、心臓に悪影響を及ぼし、最悪の場合には死に至ります。

コペンハーゲン大学で気候疾患学を専門とするゾラナ・ジョヴァノヴィック・アナセン教授は、ハーバード大学の研究結果を意外だとは受け止めていないと述べます。「この4-5年間世界中で様々な研究が行われ、大気汚染粒子が今まで考えられていたよりも多くの疾患をもたらすのかが解明されてきました。従来より知られていた循環器系疾患、呼吸器疾患や肺がんを誘引するだけでなく、例えば糖尿病も大気汚染粒子と関連があることが分かりました。より多くの高齢者が最近の研究では対象となっていることも、死亡率の上昇に帰結しています。」

ハーバード大学の研究では、中国、インド、米国北東部、欧州の大部分で、大気汚染粒子による最も多くの死亡者を記録しています。理由は、これらの国々でエネルギー生産に石炭を使用しているからです。デンマークは例えば中国よりは大気中の汚染粒子数が少ないですが、全く有さない訳ではありません。

私も主人の転勤でバングラデシュに住んでいた時、朝焼けが今までに見たことのないオレンジ色で不思議だと思っていたら、それは大気汚染による影響で色が変わって見えると知って、愕然としたことがあります。また、1週間家を空けると、日本やデンマークでは経験したことのない鉛筆の粉のような真っ黒な小さな粉が机を触るとつき、散歩して鼻をかむとティッシュが黒く汚れるので、これが肺にも入っているのかとゾッとしました。

人口が過密で古い自動車が沢山走っており、産業が発展する首都ダッカでは建築ラッシュなので、運びやすいようダッカの周りにレンガ工場が多く建てられて煙を上げていると聞きました。大気汚染の健康への影響を身近に感じる日々でした。

上述のゾラナ教授は、「デンマークにも大気汚染が存在します。誰も避けられない問題なのです。」と述べます。そして、「大気汚染の健康への影響は、煙草の被害に似ています。」と説明します。「私たちの体は微細粒子に抵抗します。微細粒子は自然な空気の構成要素ではないからです。微細粒子は肺に悪影響を与えて炎症を起こし、慢性閉塞性肺疾患、喘息、心臓血栓、脳血栓、糖尿病、肺がんをもたらします。」

コペンハーゲン大学で公衆衛生学を専門とするステフェン・ロフト教授は、「2015年に行われた世界の疫病負荷研究では、大気中の粒子が低濃度の場合の健康への影響が調査されました。その結果、大気中の粒子が低濃度の場合にも、多くの人を疾患を招くことが分かりました。同時に、2015年の研究では中国やインドのように、大気中の粒子が高濃度の場合の影響が過小評価されていました。現在では、年間約4千人が大気中の微細粒子が原因で早く亡くなっていえうことが分かっています。(デンマークの人口は約580万人)」と述べます。

ステファン氏は、大都市や自動車から離れた田舎で生活していても、空気中の微細粒子からは逃れられないと述べます。例えば、デンマーク南部にある田舎のロラン島でも、遠く離れたポーランドやドイツの交通や石炭火力発電所などから風に運ばれた粒子が空気中に混ざっています。デンマークで大気汚染率が最も低いのは、北ユトランド半島のヴェスタヘーヴ湾周辺のみだと述べます。

解決策はあります。上述のゾラナ氏は、「風力発電や太陽光発電といった自然由来エネルギーの開発を進めれば進めるほど、大気中の微細粒子の量は減り、疾患に見舞われる人の数も少なくなり、公衆衛生の向上につながります。」と述べます。上述のステフェン氏も、「自然由来エネルギーは、気候変動を防止するだけでなく、人々の健康を守ることにも寄与します。」と述べます。

デンマーク国会は、2050年までに炭素排出量をネットでゼロにすることを議決し、エネルギー源の大半を自然由来の持続可能な資源から生産することを決めています。

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